今回は退職後に「傷病手当金を受給する条件」と「退職後に必要な申請や注意点」について解説していきたいと思います。
退職後も傷病手当金を受給しその後,失業保険に切り替えて就職困難者に認定された場合、年齢や雇用保険の被保険者であった期間にもよりますが最大で1年6か月もの間,給料の6割から7割前後の手当を受給することが可能になります。
現在病気やけがにより通院中で傷病手当金の申請を検討している方,もしくはすでに傷病手当金を受給中で退職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
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①在職中と退職後の傷病手当金の受給条件
まずはじめに在職中に傷病手当金を受給する条件を4つ挙げておきます。
1.現在,疾病又は負傷が原因で療養中でなおかつ就労不能である証明ができること
傷病手当金支給申請書に医師の証明欄がありますので就労不能の証明が必要になります。
2.疾病または負傷のために就労できない日が3日連続あること
連続した3日間を待機期間と言い,待機期間の後については給料が発生していないことが条件となり4日目から傷病手当金が支給されます。
ポイントはこの待機期間の3日は必ず連続していないといけない点です。
3.退職日までに健康保険の加入期間が12ヶ月以上あること
こちらの12カ月間は同じ会社である必要はありません。
4.退職日に絶対に出勤しないことです。
退職日に挨拶周りや引き継ぎをするため出勤しなければいけない方もいるかと思いますが,退職日に出勤扱いになってしまうと傷病手当金を受給できなくなってしまいます。
最も確実に傷病手当金をもらうためには,退職日を含む在職最後の4日間は絶対に出勤しないことです。
そしてこれらの条件にさえ合っていれば在職中に傷病手当金を受給していなくても退職後に初めて傷病手当金を申請して受給することも可能です。退職日までに給料は全額もらっていても問題ありません。
傷病手当金の受給期間は最大で1年6か月です.この4つの条件をクリアするだけで退職後も給料の約70%の手当を最大で1年6か月もの間受給することができます。
②退職日までの事前準備
退職日までの事前準備は先ほどの4つの条件を意識するように準備をしていけば大丈夫です.また、少なくとも気を付けておきたいことを下に三点挙げています。
1退職日の前日までに連続3日以上休んでおく
この3日間に関しましては病欠・有休・公休・土日祝祭日でも大丈夫ですが,必ず連続している必要があります。
2.退職日に出勤しない
こちらが最も重要になります。連続3日の待機期間と同様に有給や公休でも構いません。絶対に出勤しないように退職日までの有給休暇の計画を立てておくようにしましょう。
3.診断書を書いてもらう病院に初診日が退職日から4日以上前であることの確認と傷病手当金申請の相談をしておく
退職後に医師に退職日を含む4日間の就労不能を証明してもらい申請書に記入してもらうためです。
医師は初診日以降の期間でしか就労不能を証明することはできません。
こちらは現在すでに通院中であれば特に問題ないかと思いますが,診断書を書くことができる条件が病院によって違う場合がありますので在職中に医師に相談をしておくのが良いと思います。
③退職後の注意点
次に退職後の注意点についてです。
1.傷病手当金受給中は絶対にアルバイトや就職活動をしないこと
傷病手当金は就労不能な方のための手当てになります。求職申込と同時に就労不能な方が受け取ることができる失業保険と同時に受給することができません。ただ、症状が回復して働ける状態になった後であれば失業保険を受け取れます。そのため、失業保険の延長をしておきましょう。
2.退職後30日以上経過し,その後も傷病手当金をもらい続ける場合は必ず失業保険延長申請をしておくこと
傷病手当金受給終了後は失業保険の受給に切り替える方もいらっしゃると思います。ですが,失業保険の受給期間は退職日の翌日から1年以内になります。その時点でもし失業保険の残日数が残っていたとしても受給終了になります。
特に45歳以上の方や病名により就職困難者に認定された方は失業保険の受給日数が300日以上になる場合がありますので,必ず失業保険延長申請をしておいてください。
こちらの申請はハローワークで行うことができ,失業保険をもらい始める時期を最長で3年間先延ばしできます。退職後30日が経過した翌日から1ヶ月以内が申請期限となっておりますので,忘れないように申請しておいてください。
3.退職後も定期的な通院と診療をしておくこと
退職後,傷病手当金を受給するためには退職後も療養中で,なおかつ就労不能であることの証明が定期的に必要になります。診療の間隔が1カ月以上空いてしまうと診断書の記入をしていくれない病院もありますので注意が必要です。
④公的医療保険の選択
では最後に退職後の公的医療保険の選択について解説していきます。
傷病手当受給中に退職後の公的医療保険を国保にするか任意継続にするかで迷われている方も多いと思います。退職後の傷病手当金は在職時に加入していた健康保険組合から支給されます。ですが国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。そうなると退職後,国保に切り替えてしまうと傷病手当金は支給されないので任意継続を選ばないといけないのかというとそういうわけではありません。
先ほどの退職後も継続して,傷病手当金を受給する条件の4つをクリアしていれば退職後,国保に切り替えたとしても傷病手当金を受給し続けることができます。
ということは、どちらの料保険を選択するかは傷病手当金のことは切り離して純粋にお得になる方を選べばよいことになります。
ではここで任意継続と国保それぞれの特徴を簡単にあげておきます。
任意継続の特徴
任意継続の特徴は家族を被扶養者として加入させることができる点です。国保にはこの制度がありませんのでご家族の中に収入のない方やお子様が何人かいらっしゃる方は任意継続を選ばれると良いと思います。
任意継続とは言っても退職後は会社が半分を払ってくれませんので保険料は在職時の2倍になります。任意保険の申請は退職日の翌日から20日以内に手続きを行う必要があります。加入期間は最大2年間になりますが,納付期限までに未納だった場合資格を喪失してしまいます。
国民健康保険の特徴
国保の特徴は退職後,特定理由離職者に認定されると保険料の大幅な減免を受けられる点です。
ですがこの申請には失業認定後に受け取る雇用保険受給資格者証が必要になりますので,傷病手当金受給中は申請できないということになります。
しかしこの減免制度は傷病手当金受給終了後に失業認定を受けて申請したとしても国保に切り替え時までにさかのぼって減免を受けられます。傷病手当金受給中は高額な保険料を支払うことになりますがその後,減免の申請をすればそれまで支払ってきた保険料が戻ってきます。
もちろん一旦,任意継続を選んでおき傷病手当受給終了後に国保に切り替えて減免を受けることもできます。
任意継続は基本的に2年間脱退不可なのですが,特定理由離職者の場合は特例として任意継続期間中に国保に切り替えることができます。ですがその場合は任意継続切り替え時まで遡って減免を受けることはできませんので,独身で世帯主が1人の場合は退職後は国保加入を選ばれると良いと思います。
※人によって異なるため制度をあらかじめ調べておきましょう。
まとめ
今回は傷病手当金を退職後も受給し続ける条件と注意点に解説しました。
退職後は症状の不安もそうですが、金銭的な不安も大きくなっていきます。傷病手当金は定期的に通院し、申請の提出を忘れなければ受け取ることができますので、症状がつらい状態でもこれだけは申請しておきましょう。